
総務のデスク周りでは、こんな“心の声”がつい漏れてしまう瞬間があります。
朝、パソコンを立ち上げる前に頼まれる書類コピー。
会議の直前に渡される「今すぐこれ印刷しといて」。
フロアの電球が切れたからと、なぜか総務が脚立を持って交換しに行くことも。
総務は「会社の何でも屋」と誤解されやすいポジションです。
しかし、すべての依頼を引き受けていては、本来の業務に手が回らなくなり、気づけば“雑務の山”に心身ともに疲れ果ててしまいます。
本記事では、元総務部長として、総務が“何でも屋”になってしまう背景と、その状態を抜け出すための実践的な工夫を、現場の空気感も交えながらお伝えしていきます。
「総務=雑用係」の誤解が何でも屋を生む
社内に「総務の仕事は雑用が中心」という雰囲気があると、総務が何でも屋にされる流れはなかなか止められません。
これは 会社の文化だけでなく、日本全体の“総務=雑務”という誤解 が影響しています。たとえば、
外から見ると「全部まとめて総務の仕事」だと思われがちです。
しかし、本来は“本業の合間に仕方なくやっている”だけの業務も多いのです。
だからこそ「うちの総務は雑務担当ではない」という認識を、社長を含め社内全体で変えていく必要があります。
「雑務係」から「調整役」へ総務の役割と価値を再定義する
総務の本来の役割のひとつに、「人や部署をつなぎ、物事を円滑に進める調整役」 があります。
元総務部長として感じるのは、総務が雑務中心になっている会社ほど、総務社員の能力や経験がうまく活かされていない ということです。
少し想像してみてください。
もし会社に総務部が存在しなかったら、こんなことが起こります。
実はこれらの“詰まり”は、普段総務が当たり前のように調整していたからこそ表に出ていなかったものです。
総務というポジションは、日々部署間の橋渡しをし、社員からのちょっとした相談ごとを拾い、トラブルを未然に防ぐ。
こうした“裏方の調整”が多いのですが、目に見えづらいため、どうしても「雑務係」だけが目立ってしまうのです。
結果として、本来重要な役割である「調整役」のイメージが薄れ、“雑務担当”という認識が社内に定着してしまいます。
総務が雑務に追われると起こる4つのデメリット
雑務ばかり引き受ける総務社員は、仕事への向き合い方が次第に変わっていきます。
元総務部長として、そんな社員に起こる変化を4つの特徴から解説していきます。
雑務ばかりで「やりがい」を失う
雑務ばかりを引き受け続けると、どれも“簡単で誰にでもできる仕事”になりやすく、総務社員は次第にやりがいを感じにくくなります。
特に、コミュニケーション能力が高い社員や、数字を正確に合わせたり、細かい確認作業が得意な社員などは、本来であればもっと活躍できる場面が多いはずです。
しかし、雑務が中心になる環境では、そのスキルがほとんど使われることなく、「今日も結局、雑務で終わったな…」という日々が続きがちです。
結果として、
といった変化が、徐々に表れてきます。
元総務部長として、こうした「スキルと与えられる仕事のアンバランス」を現場で何度も見てきました。
「この人、適切な環境ならもっと活躍できるのに…」そう感じる場面は、正直少なくありませんでした。
【暗中模索】やりがいがない?と思われがちな総務の「本当の魅力」とは
できて当たり前の雑務は評価されない
雑務は、周囲から見るとどうしても「簡単な仕事」「すぐ終わる作業」と軽く扱われがちです。
しかし、実際に対応している総務社員は、自分の通常業務の合間を縫って作業していることがほとんどです。
さらに総務には、
という“気遣い体質”の人が多く、依頼が来ると自分の仕事を後回しにしてでも先に雑務へ取りかかることもよくあります。
ところが、こうした配慮は目に見えにくく、結果として
という状態が続いてしまいます。
特に忙しい時期は、「こんなに対応しているのに誰からも評価されない」という感情が積み重なりやすく、やがて “やっても意味がない” という気持ちにつながる社員も出てきます。
元総務部長として、この“報われにくさ”に悩んでいる社員を何度も見てきました。
【評価のギャップ】総務が「評価されない」と言われる本当の理由と評価されるための行動
常に受け身な姿勢になってしまう
雑務が多い環境では、総務社員が 受け身の体質 になりやすくなります。
その結果、業務改善や職場環境の課題に自ら目を向ける姿勢を失ってしまいます。
人から言われた仕事を淡々とこなすだけでは、やりがいは感じられず、自己成長も望めません。
「日々、簡単なことを何となくこなしている」と虚無感に苛まれる社員も少なくありません。
例えば、私が雑務に追われていた社員に書棚の整理を提案したとき、「私が整理します」と前向きな返答が返ってきたことがありました。
すると、その社員は活き活きと作業を進め、自己啓発的に改善や解決に取り組む姿勢を見せてくれました。
このように、雑務中心の環境では受け身のままでは仕事への意欲も失われ、社員の成長にまで影響を与えてしまうのです。
通常業務でミスが目立ちだす
雑務は、総務社員がコントロールできるタイミングで依頼されるわけではありません。
通常業務で忙しいときにも容赦なく舞い込んできます。
特に、月末の締切や提出書類の作成と重なると、気持ちが焦ってミスにつながることも。
総務の仕事は、毎月決まった日に仕上げるルーティン業務が多く、事前に予定がわかるものもありますが、急に入る雑務は調整が難しいのが現実です。
結果として、「通常業務+締切間近+急な雑務」が重なるとミスが増え、修正作業にさらに時間を取られる悪循環に陥りやすくなります。
こうした状況も、総務が雑務中心の環境に置かれることで起こりやすい問題のひとつです。
こんな職場環境は「何でも屋」になっている?
総務が雑務を担うことは決して悪いことではなく、会社を回すために重要な役割のひとつです。
しかし、過剰に雑務に追われる環境は問題です。
ここでは、過剰に雑務を依頼される職場環境の特徴について紹介していきます。
社員にすれ違うだけで雑務を依頼される
職場で社員と何気にすれ違うときに、急に話しかけられることがあります。
など、咄嗟に思いつき依頼される場面、多くないでしょうか。
電球を交換するなどの簡単な雑務は、依頼する前に自分で対応できたのでは?と思ってしまいます。
しかし、このような状況は電気を変えるなどの雑務は「総務の仕事」と決めつけられている証拠です。
のような状況で、無意識に“総務に頼もう”と思っているのです。
その結果、総務とすれ違う際に咄嗟に思い出し、依頼される。
こうした背景がある環境では、「総務=何でも屋」と強く認識されているのです。
会議やミーティングの度に雑務が増える
会議やミーティングで決まったことを、総務に準備させる流れが定着している職場もあります。
たとえば、
など、内容の適性を考えず「とりあえず総務に依頼する」というケースです。
さらに、多くの社員が出席する場では、「それは別の部署で」と意見を言いにくい空気が生まれやすく、結局総務が引き受けざるを得ない状況になってしまいます。
もちろん、総務が担うべきものもあります。
しかし、こうした環境では別の適任者がいるにも関わらず、とりあえず総務に依頼が集中することが問題であり、場合によっては余計に時間がかかったり、調べるところから始めなければならないなど、非効率な進め方になりやすいのです。
役割が曖昧な作業は全部総務に振られる
職務範囲が明確でない作業は、「とりあえず総務にお願いしよう」という流れになりやすいものです。
たとえば、社内で発生するちょっとした依頼や、どの部署が担当すべきか迷う作業などが該当します。
こうした作業は、総務にとっては本業の合間に行うことになるケースがほとんどです。
しかし、周囲からは「総務がやるのが当然」と思われるため誰も手を挙げず結果として総務に依頼が集中します。
この状態が続くと、総務社員は本来の役割である「調整・管理」に集中できなくなり、雑務に振り回される日々が常態化してしまいます。
職務の境界が曖昧な作業を明確に切り分けることが、総務が何でも屋にならないためには重要です。
総務部内でも雑務を優先している
総務部自身が、つい雑務を優先してしまうケースもあります。
「後回しにすると周囲からクレームが来るかも」という意識や、「頼まれたことはすぐ片付けるべき」という気遣いが、雑務を最優先させる要因です。
こうした雑務に手を取られると、本来の重要な業務や改善活動の時間が削られてしまいます。
総務部内で「まず雑務を片付ける」習慣が定着すると、周囲からも「総務は何でもやってくれる部署」という印象が強まり、雑務の依頼がさらに増えてしまう悪循環に陥ります。
総務自身が優先順位を意識し、「対応すべき雑務」と「本来の業務」を切り分けることが、何でも屋化を防ぐための大切な視点です。
総務が何でも屋から脱却するための実践的な3つの工夫
ここまで、総務が会社の何でも屋になってしまうリスクと、起きやすい環境について紹介してきました。
では、どうすれば総務が何でも屋にならずに済むのでしょうか。
ここからは、私が実際に取り組んだ実践例を中心に解説します。
読んでいただければ、明日からでも実践できるヒントが見つかりますので、ぜひ試してみてください。
備品がどこにあるのかわからないから総務に依頼される
総務が何でも屋になってしまう理由の一つに、「総務に聞けばわかる」という現場の意識があります。
例えば、備品などがなくなったとき、ストックがどこにあるのかわからなければ、問い合わせは自然と総務に集中します。
物の置き場所が不明瞭だと、社員は「自分で探すより総務に聞くほうが早い」と考えがちです。
そのうえで、「持ってきてほしい」「予備を多めに補充してほしい」といった付随する依頼も増えてしまいます。
つまり、最初の段階で社員が備品の場所を把握し、総務への問い合わせを減らすことが、結果的に総務の雑務を減らすことにもつながるのです。
「自分でできる」雑務を切り分ける仕組みとマニュアル化
雑務を依頼する社員のなかには、「自分でやった方が早い」と感じるケースも少なくありません。
実際に相談を受けた社員からは、「自分でやった方が早いのに、なぜ毎回総務がするの?」という声もありました。
これは、雑務は総務がするものという暗黙の了解があり、社員も仕方なく依頼している状況です。
こうした非効率なやり取りは現場でよく見られます。
つまり、総務に依頼するよりも自分で動いた方が早い作業は、現場に任せる方が効果的なのです。
例えば、
瞬時に対応できるものは、思い切って任せた方がスムーズに進むことが多いのです。
誰がやっても結果が同じものをマニュアル化
効率を考えて現場社員に対応してもらう雑務は、「誰がやっても結果が同じもの」を基準にすると分かりやすいです。
例えば、
こうした作業は、気付いたときにすぐ動ける上、作業工程が誰がやっても同じです。
さらに、マニュアル化すればミスも防げ、総務への依頼も減らすことができ、メリットが大きくなります。
取り組むときは「効率化」を名目に
単に総務への依頼を減らすことだけを目的にすると、現場からは、
と不満が出る可能性があります。
そのため、「総務に頼むより早い」という「効率化』を名目に進めると、余計な衝突を避けつつ導入できます。
前向きな改善として受け止められやすく、スムーズに実践できるのがメリットです。
総務の調整役としての役割を強調し本来業務に集中する
この記事で最も重要な視点は、「総務は調整役」であるということです。
雑務ばかりを引き受けるだけが総務の仕事ではありません。
会社が効率的にスムーズに動くためには、部署間や社員の調整こそが総務の本来の役目です。
先ほど紹介した、何でも屋にならないための工夫も、会社全体のマンパワーをフル活用するための取り組みです。
例えば、社員が効率的に動ける環境作りや、職場の安全性を保つ取り組みなどは、総務でなければ見えにくい部分です。
雑務に取られていた時間を適材適所に効率よく分散することで、本来の目的により集中できます。
普段のルーチンワークの合間に雑務に振り回されるのではなく、職場の改善点を見つけて解決すること。
これこそ、総務に求められる大切な役割です。
まとめ:総務が何でも屋にならないために
総務が雑務に追われる状況は、多くの場合「会社の文化」「役割の誤解」「業務の切り分け不足」が原因です。
本来の役割は、単なる雑務担当ではなく、部署間や社員をつなぐ調整役。
本記事の内容を踏まえると、総務が効率的に動くためのポイントは次の通りです。
備品や情報の所在を明確にする
社員が自分で探せる環境を作ることで、総務への問い合わせを減らす。
「自分でやった方が早い作業」は現場に任せる
瞬時に対応できる雑務は総務で抱え込まず、現場に切り分ける。
誰がやっても同じ作業はマニュアル化
コピー用紙発注やトナー交換など、手順が決まっている雑務はマニュアル化して標準化。
効率化を名目に改善を進める
単に雑務を減らすのではなく「作業を効率よく進める方法」として現場に浸透させる。
総務は調整役として会社全体を見渡す
雑務に振り回されず、部署間の調整や職場改善や社員の相談対応など、本来の価値ある業務に集中する。
この記事で紹介した方法は、私自身が実際にやってみて総務への雑務が減った取り組みです。
総務の雑務を減らし、ストレスを軽くするヒントになるはずです。
ぜひ実践して、雑務に振り回されない環境づくりに役立ててください。
本来の調整役として会社全体を支える役割に集中できるような職場環境になれば幸いです。
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