
総務職に長く就いていると、出来る業務や得る経験も増えていきます。
特に社歴が10年を超えるような総務社員の経験値は会社にとって貴重です。
しかし、もし突然の異動や転職が決まったら、自分が抱えてきた業務は、誰かにきちんと引き継げるでしょうか?
「自分しかわからないこと」が思いのほか多いと、気づくのはそのときかもしれません。
本記事では、総務歴20年ほど経験して退職した私の引継ぎ体験をメインに、社歴が長い総務社員にやっておいて欲しいことを紹介していきます。
属人化している業務の注意点
総務として長く働いていると、いつの間にか「自分しかできない仕事」が増えていませんか?
特に、業務範囲が広い総務は属人化しやすい業務で溢れています。
そんな、属人化している業務についての注意点を解説していきます。
引継ぎで気づく自分しか知らない仕事
いま自分が抱えている業務のなかで、どの業務が属人化しているかを確認する。
これって、目の前の業務を最優先するあまり、普段はなかなか把握しにくいものですが、それが明確にわかるタイミングがあります。
それは、退職や異動などで引継ぎを行うときです。
と、抱えていた業務の属人化が明確になります。
しかし、引継ぎ期間が短いと、すべてを伝えきれず中途半端になってしまうこともあります。
このような状況にならないためにも、いま抱えている業務が属人化していないか、チェックする機会を設けることも大切ですね。
実際に、総務で属人化しやすい業務、どんなものがあるのか、いくつか例を挙げてみます。
総務でよくある属人化しやすい仕事とは?
総務は、会社の中でも「何でも屋さん」になりやすいポジションですよね。
業務の幅が広く、ルールが曖昧なことも多いため、担当者の裁量に任される部分が自然と多くなります。
「自分でやっておこう」と、そんな思いからスタートして、いつの間にか「自分しかできない仕事」になっていた、なんてこともよくあります。
また、急ぎの案件が多いと、「とりあえず処理して回す」ことを優先しがちなのも、属人化が進む一因ですね。
あの人に頼めば早い、が属人化の始まり
取り合えず、依頼があったから自分で処理した、という業務はその後も同じ人に依頼されることもよくあります。
このとき、すでに属人化の入口に立っています。
周りの社員は自然に「この仕事はまたあの人にお願いしよう」と思ってしまいます。
一度経験した人に依頼する方が、処理が早いと考えてしまいますからね。
こうした状況は自然に起こってしまうので、周りも気に止まらず属人化しやすくなります。
定期的なメモ整理・ナレッジ化
属人化を防ぐには、「自分だけが知っていること」を外に出す仕組みを作っておくことが大切です。
その第一歩が「ちょっとしたメモ」を溜めておき、定期的に整理してナレッジとして残すという習慣です。
忙しい総務の現場では、「文書化」なんて余裕がないというのが本音ですよね。
しかし、たとえば以下のような形でも十分効果があります。
完璧なマニュアルを作る必要はなく、誰かがあとで参考にできる「情報の置き場」があることが大切です。
私は、週に1回、5~10分だけ「その週の気づきメモ」を社内の共有フォルダに残すようにしていました。
それをもとに後任が「引き継ぎ資料を作る際のヒントになった」と言ってくれたこともあります。
小さな積み重ねが、いざというときの「引き継ぎの質」を大きく変えます。
時期が限定している業務
総務の業務には、行う時期が限られているものもあります。
年末調整や株主総会の準備、大掃除の段取りなどがその代表です。
こうした「年に1回の業務」は、「担当者がやってくれるだろう」と、他の社員が関与しないまま属人化しやすい傾向にあります。
また、引継ぎが発生したときに、実際のその業務を行うのが半年以上先になることもあり、その頃には内容を忘れてしまうのもよくある話です。
年1回の業務こそ、今のうちにやれる準備がある
こうした年1回の業務は、実際に経験してみないと緊張感や手間が実感しにくいものです。
引き継ぎで大切なのは、「ゴールまでの道筋」を伝えること。
たとえば年末調整なら、書類の入手から配布、提出された書類の扱いまで、一連の流れをざっくりと説明しておくと、後任が全体像をつかみやすくなります。
なお、こうした業務は年によって手続きや仕様が変わることも少なくありません。
細かな部分は「そのときに調べるもの」と割り切り、迷ったときに参考になる過去の手順やチェックリストだけでも残しておくと安心です。
頻度が極端に少ない業務
頻度が極端に少ない業務も、属人化しやすいポイントのひとつです。
突発的に発生する訃報の対応や、年に数回あるかどうかの郵便物の特別処理、特定記録の作成など、実際に経験しないと流れがつかみにくい業務が該当します。
こうした業務は、
ため、担当者しか分からないまま進められることが多くなります。
そのため、引き継ぐタイミングが難しく、結果として担当者が変わるたびに手探りになるケースも珍しくありません。
属人化を防ぐには、経験したときに必ず記録を残しておく、あるいは発生時の対応フローを簡単でもいいので整備しておくことが大切です。
また、実際に初めての業務をやってみたとき、案外、簡単に覚えることができるものも総務の仕事には多いため、複数の人に一度は経験をしてもらうことも大切ですね。
「いつものやり方」を誰かが知っていれば安心
頻度が少ない業務ほど、「あのときどうしたっけ?」と記憶に頼りがちです。
対応マニュアルほど堅苦しいものでなくても、「過去の対応メモ」「参考になる書式」「担当者のメモ」などが残っているだけで、次に担当する人の不安を和らげることができます。
特定のシステムを使う業務
社内の業務で、特定のシステムやクラウドサービスを使用している場合も、属人化が進みやすい要因になります。
特にその操作や設定を一部の社員しか理解していない場合、トラブルや担当変更の際に多くの時間を使ってしまいます。
私の場合、社内の業務管理ツールとして「kintone」を導入し、アプリの設計や仕様の調整をすべて自分ひとりで行っていました。
その結果、退職時の引継ぎでは、操作や修正方法を十分に伝えきれず、後任者は機能追加ひとつにも苦労したようです。
ITが得意な人でなければ、操作に慣れるまでに時間がかかり、場合によっては運用自体が滞る恐れも。
だからこそ、普段から操作手順や仕様の意図などをメモや画面キャプチャで共有しておくことが、スムーズな引継ぎにつながります。
「使える」だけでは不十分、「作れる」「直せる」人が必要
システムを運用するうえで、「見るだけ」「入力するだけ」の人は多くても、「設計・修正ができる人」は限られます。
特定の人に頼らなくても運用できるよう、設定の意図や設計のルールを残しておくことが重要です。
経験がモノをいう業務
私が実感する、もっとも引継ぎが難しい業務ですね。
特に「引き継ぎが難しい」と感じるのは、経験や人間関係が深く関わる業務です。
長年の業務の中で自然に身についた「会社独自の感覚」や、「あの人とあの人は相性が悪い」といった情報は、マニュアル化が難しく、言葉にするのも困難です。
例えば、過去に社員同士の関係がこじれたことを踏まえ、プロジェクトチームのメンバーを慎重に組む。
こうした判断は、経験を重ねた人にしかできないものです。
このような「勘どころ」や「空気を読む力」は、どうしても属人的になります。
すべてを伝えるのは難しいですが、せめてポイントとなる出来事や、過去の判断の背景はメモに残しておくと、後任者の助けになるかもしれません。
「言語化できないこと」を少しでも残しておく工夫
経験からくる判断こそ、記録に残りにくい属人化の代表例です。
とはいえ、「あの人はこういう場面が苦手」「以前こんな問題があった」など、断片でも書き残しておくと、後任者が判断に迷ったときのヒントになります。
形式ばらなくても、日記のような感覚で残しておくことが、将来の大きな支えになるかもしれません。
後任者がいないときに備える意識
近年、中小企業では「後任者がいない」状態が珍しくなくなっています。
退職や異動の話が進んでも、採用がうまくいかず、結局、誰も後を引き継げない、そんなケースも現実に起きています。
さらに、ようやく採用できたとしても、引継ぎ期間が短ければ、知識や業務が中途半端にしか伝わらず、後にトラブルになることも。
特に総務の仕事は、対応力や会社独特の感覚が問われるため、引継ぎ不足は大きなダメージになります。
だからこそ、「いつでもバトンを渡せる状態」にしておく意識が大切です。
普段から業務のポイントや判断の背景を共有し、誰が見てもわかる仕組みをつくっておけば、万が一のときも安心です。
「突然の引継ぎ」を軽くするための工夫
後任者がいないリスクに備えるためには、以下のような取り組みが有効です。
すべてを準備するのは難しいかもしれませんが、少しずつでも残していくことが、後の自分や会社を助けてくれます。
後進にバトンを渡す準備は「今」がカギ
総務の仕事を長く続けていると、徐々に責任のある業務を任されるようになります。
私の場合は、30名ほどの社員管理を10年目あたりから担当しました。
社員管理では、特に「社員間の人間関係」といったソフト面の対応が中心で、私の感覚や裁量に頼る部分が多かったですね。
こうした業務は責任感が強く、「自分の仕事」として受け止める反面、ふと「もしかすると、自分以外の人が担当したほうが、職場全体がもっと良くなるのではないか?」と考えることがあります。
これは決して「仕事の放棄」や「自信喪失」ではなく、むしろ、担当者の感覚によって職場の状況が大きく変わる可能性があるという意味です。
だからこそ、責任ある業務でも、普段の何気ない雑談の中で「こんなことをやっているよ」と共有しておくことが大切で、後任の社員も心の準備がしやすくなり、スムーズにバトンを渡せるようになります。
まとめ
長く勤めたからこそ、積み重なった業務・知識・経験があります。
それらを「誰かに渡す」ことは簡単ではありませんが、自分の仕事を整理することは、後任者のためだけでなく、自分のキャリアを見つめ直す時間にもなります。
「今のうちにできること」を始めておくことで、いざというときに慌てることもなく、気持ちよくバトンを渡せると思います。
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