
会社の規律や職場の雰囲気を乱すモンスター社員。
行き過ぎた行動やトラブルメーカー的な存在は、周囲の社員へ大きな悪影響を与えます。
放っておけば、まじめに働いている社員が疲れ果てて退職し、最悪の場合は組織全体の崩壊にまでつながってしまいます。
総務や人事としては、できれば大ごとにはしたくない。
でも現実には「処分」や「解雇」という厳しい選択をしなければならない場面も出てきますよね。
この記事では、
そんな悩みを持つ方へ、実際に進めるときに知っておきたい手順や注意点を、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
モンスター社員を辞めさせる適切な対処と処分法
いきなり「懲戒解雇だ!」と決めてしまうのはリスクが高いです。
処分に至るまでには、必ず「段階的なプロセス」を踏む必要があります。
たとえば、
という流れですね。
感情的に対応してしまうと、のちのち「不当解雇だ」と争われるリスクが高まります。
冷静に、証拠を積み重ねながら慎重に進めることが大切です。
処分の前に必要な準備と確認事項
社員への処分は感情的に進めてしまうと後でトラブルに発展しかねません。
まずは処分の対象となる行為が就業規則や法令に照らして妥当かを確認し、必要に応じて証拠や経緯を整理しておくことが重要です。
就業規則に懲戒規定が記載されているか
懲戒処分を検討するなら、まずは就業規則を確認しましょう。
がきちんと書かれていないと、処分はできません。
また、労働契約書の内容とリンクさせておくことも大切ですね。
あいまいなルールのまま処分すると、社員側に「そんなこと聞いていない」と主張されてしまう危険があります。
改善のための段階的な指導
「いきなり処分」ではなく「まずは指導」。
このステップを踏んでいるかどうかが、とても大事です。
こうした経過をしっかり残すことで、のちのち「会社として改善の機会を与えた」という証拠になります。
記録の積み重ね
問題が起こったときは、その都度しっかり記録を残しましょう。
こうした記録が多ければ多いほど、処分の正当性を裏付ける強い根拠になります。
ココに注意:感情に任せた処分は避ける!
モンスター社員があまりにも酷い行動を起こしたときに、ついカッとなって感情的になることがあると思います。
しかし、感情的になり処分や解雇という言葉をクチにしてしまうと、労働基準監督署や弁護士に相談され、証拠となる記録や資料が不十分では立場が弱くなってしまいます。
怒りに任せた懲戒解雇や処分は労働法上のハードルが非常に高いため、避けるようにしましょう。
退職勧奨という選択肢
退職勧奨は、本人に「このまま働き続けるのは難しいので、自主的に退職を考えてほしい」と伝える方法です。
解雇ほど法的手続きの制約はなく、穏便に問題を解決できる場合があります。
退職勧奨の大事なポイントは3つ。
これらの点を意識せず強く迫ると「退職を強要された」と捉えられ、後のトラブルになりかねません。
冷静に事実を伝えて判断の余地を残すことが大切ですね。
懲戒処分の種類と内容
処分にはいくつかの種類があります。
軽いものから重いものまで段階があり、いきなり解雇ではなく、順を追って進めることが基本です。
処分を行う場合は、法律上のルールがあるため、ルールに反して懲戒処分をしてしまうと社員から裁判を起こされることになりかねません。
懲戒処分を考える場合は、弁護士や社会保険労務士へ相談をするなど、不当な処分と判断されないように気を付けましょう。
訓告・戒告
もっとも軽い処分です。「今回の行動は会社に悪影響を与えた」と正式に注意するものですね。
口頭や書面で行い、記録として残すことがポイントです。
なお、訓告と戒告のざっくりとした違いは下記の通りです。
社員へのペナルティ
戒告、訓告への具体的な社員へのペナルティは会社の就業規則によって多少異なります。
そのため、大まかなイメージとして下記に説明していきます。
人事記録に残る
昇進・昇給への影響
賞与(ボーナス)評価への影響
社内での信用低下
再発時に処分が重くなる
減給・降格
残念ながら改善が見られず、次に減給処分に進んだケースもありました。
就業規則の範囲内で行ったのですが、本人から「不当だ!」と抗議があり、社労士に立ち会ってもらったこともあります。
やはり、処分の際には会社だけで進めると危険なので、専門家の力を借りるのが安心です。
なお、減給については労働基準法第91条で定められている範囲を超えてはいけないので、こちらも注意が必要です。
(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
参照:労働基準法 e-Gov 法令検索
ココも注意:就業規則と賃金規定への明記は必須!
就業規則や賃金規定に明記されており会社の規定に沿った形でないと認められにくくなります。
一方的に会社側の意向で減給するのではなく、減給、降格の事由がそれぞれ定めていることが望ましく、きちんとした規則に則った形で処分をする必要があります。
きちんとした規則に則った形で処分をする必要があります。
普通解雇
口頭注意、始末書、面談などを経て、それでも改善が難しいと判断されると普通解雇を検討します。
などの場合には、仕方ない判断ですね。
ただし、これも「合理的な理由」がなければ不当解雇とされてしまいます。
改善のための手順を踏んで初めて検討される流れになりますね。
解雇は客観的な合理性が必要
解雇には、労働契約法第16条にも規定されているように、客観的に判断して合理性がある場合でないと無効になってしまいます。
なお、期間の定めがある労働契約については注意が必要。
やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまで、解雇をすることができないとされています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
参照:労働契約法 e-Gov 法令検索
解雇予告手当が必要
普通解雇で処分をする場合、社員に対して解雇予告通知と解雇予告手当の支払いが必要となります。
解雇予告手当とは、対象となる社員に対して解雇日の30日以上前に解雇予告をせず解雇する場合に、労働基準法により支払いが義務付けられている金銭です。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
参照:労働契約法 e-Gov 法令検索
懲戒解雇
最終手段が懲戒解雇です。
横領や重大なハラスメント、無断欠勤の常習など、会社に重大な損害を与える行為に対して行われます。
ただし「一発アウト」ではなく、やはり証拠と手順が必須。
懲戒解雇であっても、原則として解雇予告手当を支払う必要があります。
ただし、労働基準監督署に「解雇予告の除外認定」の申請を行い認定を受ければ、解雇予告手当を支払うことなく即時解雇が可能です。
しかし、実際には認定へのハードルはかなり高いと考えておいた方が良いですね。
違いはなに?:懲戒解雇と懲戒免職の違い
懲戒解雇と似たような言葉で「懲戒免職」がありますが、違いを知っている人は意外に少ないのでは。
懲戒免職は公務員について使われる最も重い懲戒処分です。
そのため、中小企業などで使う言葉は「懲戒解雇」が正しいので、この点もしっかり知っておきましょう。
モンスター社員を生まない職場作りが重要
たとえ問題社員を辞めさせても、職場環境に改善がなければ新たにモンスター社員が生まれてしまう可能性があります。
こうした環境は、社員を「モンスター化」させやすい土壌になってしまいます。
見て見ぬふりをするハラスメントの悪影響についてはこちらの記事を。
【現実視点】ハラスメントは総務の対応で決まる!放置を防ぐ「相談しやすい」職場づくり
モンスター社員が生まれる兆候
職場でいきなり「モンスター社員」が生まれるわけではありません。
多くの場合、ちょっとした勘違いや態度の変化が少しずつ積み重なっていきます。
最初は「まぁ仕方ないか」と周囲も流してしまいがち。
それが本人にとっては「許される行動」となり、やがて職場の空気を壊す存在へと変わっていくのです。
ここでは、そんな兆候を具体的に見ていきましょう。
昇進して偉くなったと勘違いする
昇進した途端、急に偉そうな態度になる人がいます。
本来、昇進とは責任が増えること。ここを勘違いしていると危険ですね。
ところが、基準があいまいな人事制度や勤続年数だけで役職が与えられると、管理能力や人間性が追いつかないまま肩書きだけが先行してしまうのです。
その結果、部下の信頼を失い、逆に組織の雰囲気を悪くするモンスター社員になってしまいます。
自己中、攻撃的、対人トラブル…そんなモンスター社員のカテゴリーはこちら。
後輩が増えて高圧的になる
後輩ができると、人は少なからず「指導しなければ」と思うものです。
ただし、その気持ちが歪んで「言うことを聞かせたい」という方向に傾くと危険です。
と高圧的に会話をしだしたら要注意。
放置し続けると、周囲から注意を受けても本人は「教育の一環だ」と正当化してしまいます。
こうした態度は、自分勝手な考え方を周りに押し付けてしまい、職場全体に悪影響を与えてしまう典型的な兆候です。
自己中社員の特徴、会社や総務が対応する方法についてはこちら。
【自己中社員】会社の規則や命令を無視する自己中心的なモンスター社員の特徴と対策
社内での呼び方が緩くなり始める
「さん」付けから「くん」付け、さらにニックネーム呼び…。
あなたの職場では、どのような呼称で呼んでいますか?意外に、職場の呼称ルールは大事です。
先輩社員には「さん」を付け、後輩社員には「くん」付けで呼んでいる人は多いのではないでしょうか。
「くん」付けは立場を確立させてしまう危険な言葉であり、無意識に上下関係を構築してしまいます。
また「ニックネーム」で呼んでいる職場は、親しみがある一方で、関係がこじれると悪いニックネームが付けられる可能性があります。
すると、いわゆる「会社内いじめ」が起こってしまいます。
社内のモラル維持のためにも「さん」付けで統一することが、一般社会での常識と認識しましょう。
職場環境を見直すことも大事
なぜ問題行動を起こす社員がいるのかを冷静に分析する
問題を起こすモンスター社員がいる場合、職場環境に原因があることがほとんどです。
組織内にいると、現状の職場環境に慣れてしまい客観的に見えなくなることも。
そのため、一度冷静になり客観的に見て、
などを再確認し、モンスター社員を生まないための事前の職場環境チェックも大切なことですね。
最後に
モンスター社員を放置すると、周囲の士気が下がり、会社全体がダメージを受けてしまいます。
実際に、数人の優秀な人材が「もう限界です」と辞めてしまった苦い経験もあります。
だからこそ、対応を後回しにしてはいけないんです。ただし、感情で動くのは危険。
私も何度も「もう辞めてもらいたい」と思うたびに社労士や弁護士に相談して、少しずつ段階を踏んで進め処分をしたこともありました。
もし今、あなたが板挟みになって苦しんでいるなら、まずは「証拠を残すこと」から始めてみてください。
そして決して一人で抱え込まず、社長や幹部、専門家を頼ることが大切です。
この記事が、少しでも同じように悩む総務や現場の方の助けになれば嬉しいです。
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