
近年、中小企業でも社員の柔軟な働き方や職場環境の向上が重要な課題となっています。
そのなかで欠かせないのが「人事評価制度」です。
そんな社員の不満を放置していては、離職やモチベーション低下につながりかねません。
本記事では、私自身の実体験をもとに、中小企業が人事評価制度を導入する目的と、スムーズに進めるための手順を解説します。
なぜ必要?中小企業の人事評価制度
中小企業では、人事評価制度を導入していない会社も少なくありません。
その場合、社員の評価は次のようになりがちです。
しかし、こうした仕組みでは、社員の努力や会社への貢献度が正しく反映されにくいのが現実です。
すると、社員はしだいに…
といった不満が積み重なり、やる気の低下や離職につながる恐れがあります。
だからこそ、中小企業でも公正で透明性のある人事評価制度を導入することが必要なのです。
会社が気付きにくい社員の本音
会社に自分の努力や頑張りを評価してもらいたい。そんな気持ちとは裏腹に、不明瞭な評価を受ける社員。
すると、社員の間ではしだいに会社が気付きにくい本音が漏れ、現場のモチベーションが低下しているかもしれません。
ここでは、人事評価制度がない場合に会社が気づきにくい、社員が抱える本音について紹介します。
増える仕事、増えない給料
社員の多くは月給制で働いているため、毎月の業務量の増減が給与に反映されることはほとんどありません。
そのため、仕事が増えた月には「仕事だけ増えて、給料は変わらない」と不満を抱くケースが多く見られます。
特に多くの業務を抱える社員にとっては、
など、業務に対する評価が見えづらいのが実情です。
こうした不透明さが続けば、給与と労働のバランスに納得できず、転職を考えるきっかけにもなりかねません。
一方で、人事評価制度を導入し、業務の頑張りが昇給や賞与にどう結びつくかを見える化できれば、社員にとって励みになります。
仕事の質を上げても評価されない
社員のなかには、生産性を高めようと、仕事の質を向上させる努力をしている人もいます。
例えば、こんな社員。
しかし、こうした努力は成果が数字に表れにくく、上司や会社に気付かれにくいもの。
その結果、人事評価の対象にならずせっかくのやる気も…
と感じる社員が出てきます。
せっかく生産性を高めても、その努力が正当に評価されなければ、モチベーションの低下や成長意欲の喪失につながります。
こうした声は表面化しにくいため、人事評価制度で「質の向上」も評価できる仕組みを取り入れることが、社員のやる気ややりがいの向上にとても重要なこポイントです。
この先どうなるの?将来設計が組みにくい
若手社員は、年齢と共に将来のキャリアや結婚、家庭などの将来設計を考えるようになります。
しかし、仕事に対する評価基準がわからなければ…
といったキャリアパスが見えず、将来への不安が募ってしまいます。
先の計画が立てられないと…
という不安と疑念につながりかねません。
私の経験上、特に先のことを考えて行動する優秀な社員ほど、この発想に早くたどり着き、放置すれば退職につながります。
退職されると会社にとって大きな損失です。
だからこそ、人事評価制度を通じて給与の見通しやキャリアパスを明確に示すことが欠かせません。
こうした取り組みによって、社員の将来設計を支えることが、離職防止にもつながります。
綺麗ごとでは続かない
社員のモチベーションを支えるのは、やはり「報酬」
「やりがい」や「充実感」があっても、仕事を頑張った先に報酬がどう変わるのかが分からなければ、モチベーションは長続きしません。
やがて「マンネリ化」し、最悪の場合は転職につながってしまいます。
人事評価制度の有無は、社員が将来の報酬をイメージできるかどうかを左右する、重要な役割を果たすのです。
こうした社員の本音や不安を解消するには、報酬の見通しを示すだけでなく、人事評価制度そのものをスムーズに運用する工夫が必要。
そこで次に、私自身の実体験をもとに人事評価制度を導入・運用する際に注意すべきポイントを紹介します。
人事評価制度の作り方と注意点
中小企業で人事評価制度を作ると、多くの壁に直面します。
私も実際に自社で制度を作ったとき、評価制度自体の整合性を取るのに苦労しました。
外部の専門家とのやり取りや、実際に作ってみた経験から、
そうした実体験を基にスムーズに作る方法について紹介します。
Step1:評価制度を導入する目的を明確にする
人事評価制度を作るにあたり、まずはその目的を明確にしましょう。
など、評価制度を通じて何を重視し、会社の制度として機能させたいのかを決めます。
この点を意識しないと、できあがった制度がどこか使いにくい、上手く機能しないなどの食い違いが出てしまいます。
最初に直面する壁:部署ごとに評価制度を作る?
評価制度を作り始めるとすぐに直面する疑問です。
部署ごとにやっている業務は違うため1つの評価基準だけではカバーできません。
と思って、その時点で挫折してしまうかもしれません。
しかし、いきなり全部署の評価制度を作る必要はありません。
まずは、数字などで評価しやすい部署、例えば営業部門や開発部門から作っていくことが良いですね。
導入後、現場に合わせて手直しが必要になることも多いため、評価基準が分かりやすい部署から段階的に進めていきましょう。
さらに、評価制度を部署ごとに段階的に進めることで、後に作る別の部署の評価と被る部分が見えてきます。
例えば…
といった行動評価の項目は、どの部署でも共通して使える評価基準です。
こうした共通部分を転用し、部署ごとの専門的な項目を少しカスタマイズするだけで、評価制度の作成にかかる時間と労力を削減できます。
Step2:評価項目を大枠で決める
次に、人事評価制度の評価項目を大枠で設定します。大枠とは、いわば評価基準のカテゴリーのことです。
会社の方針や職種に合わせて、以下の例を参考にしながら主要な評価項目をざっくりと決めましょう。
成果・業績への貢献(成果評価)
業務成果(契約数や成果物)
プロジェクト達成度(システム導入・移転・イベントなど)
経費削減効果(具体的なコスト削減実績)
社員満足度向上(アンケートや声で把握)
離職率低下や定着率向上への寄与
など
業務遂行能力(能力評価)
業務の正確性(ミスの少なさ、書類やデータの精度)
業務スピード(期限遵守、処理効率)
マルチタスク対応力(複数業務を並行して処理できるか)
ITスキル(クラウドサービスや社内システムの活用力)
改善提案(業務フローの効率化や経費削減の工夫)
など
知識・専門性
法令知識(労務、総務関連法規の理解度)
社内ルール・規程の理解度
最新情報のキャッチアップ力(ITツールや法改正への対応)
業界知識の習得度
など
主体性・問題解決力
自発的に動く姿勢(依頼待ちではなく、先回りした行動)
課題発見力(「気づき」があり改善に繋げているか)
トラブル時の冷静な対応力
限られたリソースの中で工夫する力
など
コミュニケーション力
社員対応(依頼への対応の丁寧さ、説明の分かりやすさ)
他部署との調整力(板挟みを調整する力)
経営層への報連相の的確さ
顧客や取引先との対応(電話・来客応対の印象)
など
協調性・組織貢献(情意評価)
チームワーク(他部署との協力体制)
社員サポート(働きやすい環境作りへの貢献)
社内イベント・研修の運営参加度
社員の相談役としての信頼度
など
態度・姿勢
責任感(最後までやり遂げる姿勢)
謙虚さと協調性
柔軟性(方針変更や急な依頼への対応)
倫理観・規範意識
など
これらのカテゴリーに具体的な項目を紐づけていくことで、評価基準が明確になります。
実際に評価項目を設定する際は、この中から会社の方針や社員の職種に合わせて5〜8項目程度に絞るのが現実的ですね。
あまりに多いと、評価者も被評価者も「形だけの制度」だと感じてしまい逆効果になります。
最初から評価項目を細かくしない
人事評価制度を作る際、初めから評価項目を細かく設定しないことがポイントです。
評価項目を細かくすると、
と議論の枝葉がどんどん広がり、収拾がつかなくなりやすいのです。
例えば営業社員の新規契約を評価する場合を考えてみましょう。
どちらも成果は同じ「10万円の契約」ですが、背景や労力は大きく異なります。
こうした違いまで細かく評価基準に盛り込もうとすると、人事評価制度が複雑になりすぎて運用が難しくなるのです。
まずは大きな枠組みを作り、運用しながら徐々に細部を詰めていくことが中小企業で評価制度を成功させるコツと言えるでしょう。
その評価、賞与に?昇給に?どちらに反映される?【重要】
ここで重要になるのが評価項目をあらかじめ「賞与」と「昇給」のどちらに反映させるかを明確にすることです。
この点を飛ばしてしまうと、後に評価項目ごとにイチから割り振らないといけなくなり、整合性がとりづらくなってしまいます。
考え方は「単月評価」と「総合評価」という2つの視点から決めていきます。
単月評価
単月評価は、月ごとの業務に対する具体的なパフォーマンスを測るものです。
この評価は、主に賞与に反映されることが多く短期間での成果を評価するものです。
たとえば、
といった数字で確認できる成果が中心です。
このように、売上や成果が可視化されやすい業務は、単月評価に結びつきやすいといえるでしょう。
総合評価
一方で、総合評価は、社員の長期的な貢献度を評価するものであり昇給に影響を与えることが一般的です。
過去のパフォーマンスを総合的に評価し、
などを評価します。
売上に直接は表れにくいものの、会社の成長を長期的に支える重要な要素といえます。
スムーズに作るために:叩き台や大枠は経営陣で決めてしまう
私が自社の評価制度を作った際、特に苦労したのがこの点です。
最初から現場の社員全員に「評価してほしいポイント」を聞いてみたのですが、意見が人それぞれでバラバラ。
その結果、議論がまとまらず、設計の初期段階で収拾がつかなくなってしまいました。
そこでおすすめしたいのは、まずは社長や経営陣で大きな枠組み(叩き台)を決めてしまうことです。
その後に現場の意見を聞きながら、少しずつ調整していくことが人事評価制度をスムーズに作るコツですね。
Step3:評価にそれぞれ評価点を決める
評価項目が決まったら、それぞれの評価点を決めていきます。
この評価点の決め方、実は少し工夫が必要です。
例えば、下記のような評価表があったとします。
| 大区分 | 中区分 | 小区分 | 評価点 |
| 協調性・組織貢献 | チームワーク | 部署内での協調性 | 1・2・3・4・5 |
| 他部署との協調性 | 1・2・3・4・5 | ||
| チームでの協調性 | 1・2・3・4・5 | ||
| 社員サポート | 部下へのサポート | 1・2・3・4・5 | |
| 後輩への教育・指導 | 1・2・3・4・5 | ||
| 他の社員への声掛け | 1・2・3・4・5 |
この場合、評価項目に対してどのような行動や姿勢が評価点に反映されるのか不明瞭です。
評価点は、誰が見てもイメージできる工夫が必要です。例えば、下のようにコメントを入れるとわかりやすくなります。
| 大区分 | 中区分 | 小区分 | 評価点 | コメント |
| 協調性・組織貢献 | チームワーク | 部署内での協調性 | 5 | 自ら進んで声掛けやサポートを行い常に協力体制を意識して行動している |
| 4 | 状況を見て協力や声掛けを行いチーム全体の雰囲気を良くしている | |||
| 3 | 自分の業務を優先しがちだが余裕があるときは協力する姿勢が見られる | |||
| 2 | 依頼されれば対応はするが自ら積極的に協力する行動は少ない | |||
| 1 | 協力の意識が低く自己中心的な行動が目立つ | |||
| 他部署との協調性 | 1・2・3・4・5 | |||
| チームでの協調性 | 1・2・3・4・5 | |||
| 社員サポート | 部下へのサポート | 5 | 部下一人ひとりの状況を把握し適切にフォローを行い成長を後押ししている | |
| 4 | 声掛けや相談対応を行い必要に応じてフォローできている | |||
| 3 | 声掛けはあるが必要に応じてサポート。ときには不十分な場面もある | |||
| 2 | 依頼があればサポートするが自ら積極的に動くことは少ない | |||
| 1 | 部下の状況に関心が薄くサポート行動がほとんど見られない | |||
| 後輩への教育・指導 | 1・2・3・4・5 | |||
| 他の社員への声掛け | 1・2・3・4・5 | |||
このように、コメント(行動基準)の有無で、評価者と被評価者の間に認識のズレがなくなります。
こうした評価点の根拠を示す工夫も、人事評価制度の公平性を保つ上で最も重要なポイントの一つですね。
Step4:賃金テーブルを作る
評価表が出来上がったら、次に賃金テーブルを作成します。
賃金テーブルの作成は、人事評価制度を給与や賞与に反映させるための重要なステップです。
そのため、人事評価制度を作るうえで、特に慎重に調整しながら作成しなければなりません。
賃金は評価表の「合計点」では決めない
評価項目に割り振られた評価点の合計で賃金を決めてしまうと、思わぬ不都合が生じます。
例えば、次のような賃金テーブルを考えてみましょう。
| 評価点合計 | 給与(基本給) |
| 46~50 | 235,000 |
| 41~45 | 230,000 |
| 36~40 | 225,000 |
| 31~35 | 220,000 |
一見、妥当な給与体系に見えますが、合計点だけでは会社が本当に評価したい人材を見極められません。
例えば、「協調性」を重視する経営方針の会社で、
というケースがあったとします。
この場合、単純に点数が高い社員Aの給与を上げることは、会社の理念とズレが生じ、社員間の不満を招く恐れがあります。
こうした評価制度と賃金テーブルでは、導入してもうまく会社に浸透しないですね。
ランクを付け「必須条件」も付ける
会社の経営方針に沿った人材を評価するために、単なる合計点ではなく、「ランク」と「必須条件」を組み合わせた賃金テーブルを作成しましょう。
これにより、社員の納得感がさらに高まります。
例えば、先ほどの賃金テーブルにランクを付けてみます。
| ランク | 評価点合計 | 給与(基本給) |
| A | 46~50 | 235,000 |
| B | 41~45 | 230,000 |
| C | 36~40 | 225,000 |
| D | 31~35 | 220,000 |
そして、ランクを付けたあとに、評価したいポイントを必須条件として強調します。
| ランク | 評価点合計 | 必須条件 | 給与(基本給) |
| A | 41~50 | 【部署内の協調性】4点以上 【部下へのサポート】4点以上 | 235,000 |
| B | 【部署内の協調性】3点以上 | 230,000 | |
| C | 31~40 | 【部署内の協調性】3点以上 | 225,000 |
| D | なし | 220,000 |
こうした条件を「必須条件」に設定すれば、別の評価が高いだけではランクを上げることはできません。
例えば営業成績を重視した会社では、
など、具体的な数字を設定するケースもあります。
こうした目に見える評価基準があれば、100万円の契約が取れそうなとき、もうひと頑張りできるかもしれません。
また、2ヵ月連続で契約がとれた社員は、その翌月のモチベーションは高いでしょう。
こうした「頑張った先にどのような評価があるのか」と、わかっていれば本人にとってもプラスのはず。
人事評価制度は、内容次第で社員が活き活きと活動できる一助にもなりますね。
ランクごとの賃金を決める
賃金テーブルを作るとき、具体的な賃金を明確にします。
しかし、公平性を意識すればするほど賃金設定は難しいもの。
そこで、まず最初に基準を作るために次の2点を意識します。
を思い浮かべて、賃金テーブルの中間値を決めます。
そこから、会社の貢献度や仕事への姿勢、周りへの配慮などの評価項目ごとに上下させていくイメージです。
この場合、社員の給与情報が必要なため、経営層や給与計算を担っている社員のみで対応することもあります。
制度によって評価が下がる社員もいる?
作成した新しい人事評価制度を導入すると、一部の社員でスキルや経験、成果を評価項目に当てはめた結果、
そんな社員が出てくるケースがあります。
また、スキルや能力を重視した制度では、これまで評価が高かった社員よりも若手や別の社員が上位に評価されることも。
こうした「立場の逆転」が起きると、格下げとなった社員は不満を抱き、制度導入への反対要因になりかねません。
そのため、導入時には、
といった工夫が欠かせなくなります。
制度を長く運用するためには、公平性と透明性を保ちながら、社員の納得を得ることが重要です。
Step5:誰が評価する?適任者の選定
人事評価制度の成否を左右するのは、誰が評価を行うかという点です。
「中間管理職だから」という理由だけで安易に部長や課長に任せるのは危険です。
必ず「公平に評価できる人」を選ぶ必要があります。
評価をする人とされる人の間に一定の信頼関係がなければ、制度は成り立ちません。
不平等だと思われると、不満が生まれ、評価制度そのものが逆効果になってしまいます。
評価する人も制度化する
人事評価制度を設計する際には、中間管理職になるための要件も同時にルール化しましょう。
その中に「評価者として部下を公平に判断できる」という項目を加えるものです。
この要件を満たす社員が、部長職や課長職に就ける仕組みにすることで、公平性を確保できます。
また、もし現場から「公平に判断されていない」といった声が多く上がった場合も、この要件に則って対応できるため制度の信頼性が高まります。
こんなときはどうする?:適任者がいない場合の対処
もし適任者がいない場合は、社長が直接評価を行うのも有効です。
全社員と面談する時間がない場合は、フォーマットを作成し「自己評価」を提出してもらうのも手段のひとつ。
その上で、必要に応じて気になる社員のみ上長を同席させ、個別面談を行います。
社長の負担は増えますが、評価者が特定の人物であるため、公平性を保てる大きなメリットがあります。
Step6:人事評価制度の導入と運用
人事評価制度の項目と賃金テーブルが完成したら、いよいよ導入です。
しかし、ここでも重要なポイントがあります。
新しい制度を導入するため、社員の反発や不満を生まないために慎重に取り組まなければなりません。
急な導入は厳禁。猶予期間を必ず設ける
人事評価制度は、社員の評価や報酬に直接影響します。
そのため、急な導入はトラブルのもとになります。
特に、制度によって不利になる社員にとっては不満しか残らず、逆に有利になる社員との人間関係が悪化する恐れもあります。
そこで必要なのが、猶予期間を設けることです。たとえば、
と伝えると、社員は具体的な目標を持って努力できます。
猶予期間中には、
といった活動が可能です。
この準備期間を経て導入することで、不満を最小限に抑え、制度をスムーズに根付かせることができます。
面談を飛ばすことは厳禁
人事評価制度を正しく運用するためには、定期的な面談が不可欠です。
会社によって頻度は異なりますが、面談を一度でも飛ばすことは厳禁です。
しかし、大事なことは面談を1度でも飛ばすことは厳禁ということです。
人事評価制度の目的は、単に社員の仕事に対して評価をすることではなく評価による「報酬」を決めることです。
つまり、給与や賞与などの報酬は、生活に直接関わる重大な社内規定といえます。
だからこそ、面談日はどんな予定よりも最優先すべき事項です。
必ず実施する意識を持つことが、人事評価制度の信頼性を保つ上で最も重要です。
面談の頻度はどれくらいが適正?
面談の頻度ごとのメリット・デメリット
人事評価制度を運用するうえで、面談の頻度は社員のモチベーションや評価の質に大きく影響します。
以下に、主な面談頻度ごとのメリットとデメリットをまとめました。
| 面談 頻度 | 主なメリット | 主なデメリット |
| 毎月 | ・目標とのズレを早期に修正できる ・社員の業務に対する不安や課題をすぐに解消できる ・日々の頑張りが評価に反映されやすくモチベーションを維持しやすい | ・面談に多くの時間と工数がかかる ・業務が圧迫され、かえって負担になる可能性がある ・短期間の成果に目が向き、長期的な視点が欠けやすい |
| 四半期 | ・中長期的な目標の進捗を確認しやすい ・毎月よりも時間的な負担が少ない ・評価者がじっくりとフィードバックを用意できる | ・社員の短期的な課題や不満を見逃す可能性がある ・評価までの期間が長いため、振り返りが曖昧になりやすい ・時期によっては業務の繁忙期と重なることがある |
| 半期 | ・経営層や評価者の負担が最も少ない ・長期的な視点で社員の成長を評価しやすい ・社員も長期的な目標に集中できる | ・社員の業務に対する疑問や不安が放置されがち ・評価までの期間が長いため、目標への意識が薄れやすい ・評価が過去の記憶に頼りがちになり公平性が損なわれるリスクがある |
面談頻度を選ぶ際は、会社の規模や業務内容、そして社員の働き方を考慮することが大切です。
人事評価制度を効果的に運用するためには、面談頻度を慎重に検討し、会社に合った最適な方法を見つけることが成功の鍵となります。
中小企業における中間管理職への評価の課題
人事評価制度を考えるとき、一般社員の評価ばかりに目が向きがちです。
しかし、忘れてはならないのが「中間管理職」の評価です。
中間管理職は、一般社員とは異なる役割を担っており、別枠で評価項目を設ける必要があります。
ところが実際には、日本の多くの企業で「管理業務」を適切に評価することが難しく、課題となっています。
売上や成果といった数値で評価されやすい一般社員と違い、
といった業務は、数値化が難しいため評価が不十分になりがちです。
ここからは、評価が難しい中間管理職の課題と、その対応策について解説していきます。
中間管理職の評価が難しいワケ
中間管理職の評価は、一般社員以上に難しいといわれています。その理由は主に2つあります。
管理と実務の兼任
多くの中小企業では、課長や係長といった中間管理職が、管理業務だけでなく、一般社員と同様に実務も担っています。
部下と同じ仕事をこなすことも多いため、管理能力そのものを客観的に評価することが難しくなります。
管理スキル不足
管理職に求められるのは、業務スキルとは異なるリーダーシップや組織運営の力です。
しかし、年功序列や、単に勤続年数が長いという理由で昇進した社員は、こうしたスキルを十分に備えていないケースも少なくありません。
このため、中間管理職を評価する際には、一般社員とは異なる評価基準づくりが不可欠になります。
管理職と実務職、どちらに適性があるのか
中間管理職を評価する上で欠かせないのが、社員の適性を見極めることです。
例えば、職場の雰囲気を良くして士気を高めたり、面倒見の良さで部下を支える社員は、管理職としての資質を持っている可能性があります。
一方で、「実務の第一線で成果を出し続けたい」という社員も少なくありません。
そこで理想的なのは、昇進時に以下のキャリアパスを選択肢として設けることです。
こうすることで、社員が本来持つ強みを活かし、適性に応じた役割分担を明確にできます。
人事評価制度において、この「適任の見極め」は制度全体の信頼性を高める要となります。
適正以前に厳しい現実:中小企業では「兼任」が避けられない
理想は適性に応じて役割を分けることですが、現実には人手不足のため管理業務と実務を兼任せざるを得ないケースが少なくありません。
その結果、実務に追われて管理が疎かになったり、育成やマネジメントに十分な時間を割けないこともあります。
評価制度を形骸化させないためには、「兼任を前提にした評価の仕組み」も考えておく必要があります。
だからこそ次に大切になるのが、中間管理職への権限移譲をどう進めるかです。
中間管理職への権限移譲
中間管理職にとって最もつらいのは、多くのミッションを背負いながら決定権を持たないことです。
私自身も経験がありますが、これは本当につらいことです。
たとえば、業務を円滑に進めるためにシステム導入を提案しても、決済権がないため最終判断は社長や上司に委ねるしかありません。
もし却下されれば、モチベーションの低下は避けられません。
だからこそ、中間管理職に現場を任せる以上は、一定の権限を与える必要があります。
権限を与えることで、以下の効果が期待できます。
もちろん責任も伴うため、昇進の段階で管理能力が備わっているかどうかを見極め、評価制度に組み込むことが重要です。
権限のない管理職は疲弊する
中間管理職にミッションだけを与え、決定権を与えないと、社員の不満は必ず募ります。
「現場を回してほしい」と求められる一方で、裁量がないため思うように改善が進められず、やる気を失ってしまうのです。
権限を適切に付与することは、評価制度を機能させるための最低条件といえます。
小規模な権限から段階的に移譲
最初から大きな権限を与えることは、本人の能力がまだ見極めきれていない段階ではリスクが伴います。
そのため、小規模な権限から段階的に移譲することが効果的です。
例えば、次のような範囲から始めると良いでしょう。
こうした小さな権限で成果を出す社員であれば、権限の幅を徐々に広げることで、
という好循環が生まれます。
段階的な移譲はリスクを抑えつつ、人事評価制度を着実に定着させる方法といえますね。
人事評価制度を取り入れるメリット
ここまで、人事評価制度を設計する際の注意点や課題を見てきました。
一方で、制度を取り入れることで得られるメリットも多くあります。
制度を導入すると、社員一人ひとりの頑張りや成果が見える化され、評価の透明性が増します。
その結果、社員のモチベーションが高まり、会社全体の成長にもつながっていきます。
では、人事評価制度を取り入れることによって、会社や社員にどのようなメリットがあるのか、具体的に解説していきましょう。
社員の向上心を植え付ける
人事評価制度を導入することで、成果が報酬に反映され、社員は「仕事が評価につながる」とポジティブに捉えるようになります。
これにより、以下のような行動の変化が見られるようになります。
ランクアップを目指して努力する社員が増えることで、組織全体のパフォーマンスも底上げされるでしょう。
つまり、評価制度は単なる「報酬の仕組み」ではなく、会社全体の成長を促す仕掛けとなるのです。
目標ができると定着率も上がる
社員が将来設計を立てるうえで、自分の頑張りが給与や賞与にどう反映されるかが分かると、モチベーションを保ちやすくなります。
また、転職を考えた場合でも、転職先の給与形態が不透明だと大きなリスクになります。
そのため、現在の会社で評価制度を通じて将来の給与をある程度予測できることは、安心感につながります。
といった点が社員にとって大きな安心材料となり、結果的に定着率向上にも結びつきます。
ただし、この効果を得るためには制度が社員にとって信頼できる仕組みであることが大前提です。
作って終わりだと逆効果:信頼される制度にするために
どれほど立派な評価制度でも、社員が「形だけ」と感じればモチベーションは下がり、むしろ離職のリスクが高まります。
定着率向上を狙うなら、次のような意識は不可欠といえます。
信用されない制度は逆効果になるので、定期的な見直しとブラッシュアップを行い、常に機能する評価制度にしておくことが重要です。
給与や待遇が明確化する好影響
給与や待遇の明確化は、社員のやる気を引き出し、公平感を生み出します。
特に、中途採用者や既存社員に対して透明性のある評価基準を示せば、
にもつながります。
中途採用の給与設定が明確になる
求人票に「25万~30万」と記載する際、基準が不明確だと求職者は低い金額を想定し、応募をためらうことがあります。
評価制度があれば、経験やスキルに基づく給与基準を明示できます。
たとえば次のような提示で掲載をします。
すると、求職者は自分のスキル向上を意識して応募しやすくなり、結果的に優秀な人材の採用につながります。
既存社員との給与や待遇面の明確化
最低賃金の引き上げに伴い、正規雇用社員にも賃上げが求められますが、入社時期によって給与に差が出ることがあります。
そこで評価制度を導入し、全社員に共通の賃金テーブルを適用すれば、過去の判断に左右されずに公正な基準を示せます。
これにより、社員の不満を減らしつつ、会社全体の信頼性を高めることができます。
賃金テーブルの扱いには細心の注意を!
人事評価制度とともに賃金テーブルも作成されますが、社員間で給与情報がある程度共有されることがあります。
自分の給与を他の社員に知られたくない人がほとんどのため、運用にあたっては理解を得る配慮が不可欠です。
個別面談で昇進条件や昇給を直接伝える方法は、プライバシーを守りながら透明性を保つ有効な手段です。
最後に:会社の体制に合った人事評価制度を考える
社員対応には合理性と理論性が求められ、不公平はモチベーション低下や退職の原因になります。
しかし、すべての要望を評価に反映するのは難しく、基準を広げすぎると会社経営にも影響します。
大切なのは、会社と社員が納得できる妥協点を見つけること。
社員の声を聞きつつ、会社に合った評価制度を作りましょう。
評価制度の本質は努力を正当に評価し報酬につなげることです。
これが実現すれば、社員の意欲向上と会社の成長につながるはずです。
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