
そんな感覚を持ったことはありませんか。
数時間だけ休みたいだけなのに1日分消えてしまったり、半日有給を使ったはずなのに、時間で考えると損をしている気がしたり。
実は、有給休暇そのものが問題なのではなく、取得の単位や運用方法が原因で、不公平感や使いづらさが生まれているケースは少なくありません。
有給休暇の制度は、使う側である従業員のほうが疑問に気付きやすい一方で、役員や経営層には有給がない場合も多く、「なぜ使いづらいのか」という感覚が共有されにくい現実があります。
この記事では、
について、現場目線で整理していきます。
なぜ有給休暇は「使いづらい」と感じるのか
有給休暇は、法律で定められた労働者の権利です。
それにもかかわらず、
と感じている人は少なくありません。
その理由は、決して「有給休暇が悪い制度だから」ではありません。
多くの場合、制度の設計や運用の仕方によって、使う側にストレスや不公平感が生まれてしまっているのです。
ここではまず、有給休暇が「あるのに使いづらい」と感じてしまう背景を整理していきます。
有給はあるのに気軽に使えない理由
「有給は自由に取っていいよ」と言われているのに、実際にはなぜか使いづらい。
そんな感覚を持ったことはありませんか。
例えば、
こうした場面で有給を使おうとすると、1日分の有給が消えてしまう、という会社もまだ多くあります。
結果として、
と、無意識のうちに有給の使用をためらってしまいます。
有給が使いづらいと感じる最大の理由は、休みたい時間と有給の消費単位が合っていないことです。
制度としては正しくても、使う側の生活や事情に合っていなければ、「使いにくい制度」になってしまうのです。
有給休暇の疑問は使う側の従業員のほうが気付きやすい
有給休暇に対する違和感や不満は、実際に使う立場の従業員のほうが気付きやすいものです。
なぜなら、有給休暇は使って初めて「不便さ」や「損をした感覚」が見えてくる制度だからです。
こうした違和感は、制度の説明を読んでいるだけでは見えてきません。
特に勤続年数が浅く、有給日数が少ない社員ほど、1日分の有給の重みを強く感じます。
だからこそ、
という説明だけでは、従業員の納得にはつながらないのです。
役員・経営層には有給がなく使う側の感覚を持ちにくい
有給休暇の使いづらさが見過ごされやすい理由のひとつに、役員や経営層には原則として有給休暇がない、という現実があります。
役員は労働基準法上の「労働者」に該当しないため、有給休暇の付与対象外となるケースがほとんどです。
その結果、
という構造が生まれます。
さらに、年配の役員が一般社員だった時代に有給をほとんど使った経験がない場合、「今の制度が使いづらい」という発想自体が出てこないこともあります。
これは誰が悪い、という話ではありません。
立場の違いによって、見えている景色が違うだけなのです。
だからこそ、有給休暇の柔軟性については、従業員からの声を待つのではなく、会社や総務の側から問題提起していく視点が重要になります。
有給の取得単位が生む不公平感の正体
有給休暇が「使いづらい」と感じる理由を掘り下げていくと、多くのケースで行き着くのが 取得単位の問題です。
有給休暇の付与日数は法律で決まっていますが、どの単位で使えるかは、会社ごとにバラバラです。
そしてこの「単位の違い」が、思っている以上に不公平感を生み出しています。
1日単位の有給が生む「無駄に使っている感覚」
有給休暇が1日単位でしか取得できない会社では、次のような場面がよく起こります。
本来なら、数時間休めれば十分な用事です。
それでも制度上、1日分の有給を使わざるを得ない。
このとき、多くの人がこう感じます。
この「損をしている感覚」こそが、有給を使いづらくする正体です。
特に、有給日数が限られている社員にとって、1日分の消費は心理的な負担が大きくなります。
結果として、
という選択が積み重なり、有給が“使える制度”ではなく、“取っておく制度”になってしまうのです。
半日有給は本当に平等なのか
「それなら半日有給があればいいのでは?」そう思う方も多いかもしれません。
確かに、1日単位よりは柔軟性が増します。
しかし、半日有給にも別の不公平感が潜んでいます。
例えば、勤務時間が以下の会社を考えてみてください。
この場合、
という差が生まれます。
制度上はどちらも「半日有給」で、消費する有給は同じ0.5日です。
しかし、
同じ5日分の有給を使っているのに、20時間もの差が出てしまいます。
これは、使っている本人からするとかなり大きな違いです。
勤続年数が少ない社員ほど影響が大きい理由
この不公平感は、特に勤続年数が少ない社員に強く影響します。
入社して間もない社員は、
という状態にあります。
その中で、
こうした状況が続くと、「制度として不公平なのでは?」という疑問が生まれるのは自然なことです。
もちろん、会社として意図的に不公平にしているわけではありません。
しかし、結果として不公平感が生まれているという事実は、見過ごすことができません。
ここで大事なのは、「制度として正しいかどうか」ではなく、「納得して使える制度かどうか」という視点です。
時間単位の有給休暇という選択肢
ここまで見てきたように、有給休暇の使いづらさや不公平感の多くは、取得単位が生活実態に合っていないことから生まれています。
その解決策のひとつとして、近年注目されているのが 時間単位の有給休暇 です。
国が時間単位有給を推進している背景
時間単位の年次有給休暇は、国の「働き方改革」の一環としても推進されています。
会社が就業規則に定め、労使協定を結べば、1時間単位で有給を取得することが可能になります。
これは、「休むときは1日丸ごと」という考え方から、必要な時間だけ柔軟に休める働き方へと、社会全体がシフトしている表れとも言えます。
こうした事情は、1日単位で区切れるものばかりではありません。
だからこそ、時間単位で有給を使える仕組みは、現代の働き方に合った制度だと言えます。
参考:厚生労働省 時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!
時間単位有給は便利でも「何時間でも使える制度」ではない
時間単位で有給休暇が使える制度は、一見するととても便利に見えます。
通院や役所の手続き、子どもの行事など、数時間だけ休みたいときには確かに助かります。
そのため、「有給は時間単位で自由に使えるようにすればいい」と考える人も多いのです。
しかし実は、時間単位有給には、あらかじめ決められた制限があります。
そのひとつが、「年間5日分まで」という上限です。
時間単位有給には「年間5日分まで」という上限がある
法律上、時間単位で取得できる有給休暇は、1年あたり最大で5日分までと定められています。
これは、1日の所定労働時間を基準に換算されます。
たとえば、1日8時間勤務の会社であれば、時間単位有給として使えるのは年間40時間までという計算になります。
この上限を超えて休みたい場合は、半日単位や1日単位の有給休暇として取得する必要があります。
「時間単位なら無制限に使える」という制度ではない点は、意外と知られていない部分かもしれません。
なぜ「5日分まで」という制限があるのか
この上限が設けられている理由のひとつは、有給休暇が細切れになることを防ぐためだと考えられています。
有給休暇の本来の目的は、心身をしっかり休ませることです。
もし有給がすべて時間単位で使えると、短時間の休みばかりになり、結果として「まとまった休みを一度も取っていない」という状況が生まれかねません。
時間単位有給は利便性の高い制度ですが、それだけに偏らないよう、あえて上限が設けられているのです。
時間単位有給「5日分上限」は今後見直される可能性もある
現在、時間単位で取得できる年次有給休暇(時間単位年休)は、年間5日分(40時間)までとされています。
これは2009年の法改正で導入された制度です。
この上限について、見直しの動きが進んでいます。
2024年6月、政府の規制改革推進会議が上限緩和を検討課題とし、厚生労働省に制度改正を要請。
厚労省は2025年度中に結論を出す方向で調整しており、早ければ2026年4月施行の可能性があります。
見直し案は、「付与された年次有給休暇日数の50%までを時間単位で取得可能にする」というものです。
例えば、年休20日の従業員であれば、時間単位で使える上限が5日分から10日分に広がります。
なお、この緩和は年5日の有給取得義務とは別枠で維持される見込みです。
企業側は引き続き、時間単位分と義務取得分を分けて管理する必要があります。
制度はまだ確定していませんが、上限が変わっても対応できる運用を今から想定しておくことが、実務面では安心と言えるでしょう。
生まれやすい「不公平感」と「使いづらさ」
ただ、この5日分という制限があることで、別の悩みが出てくるのも事実です。
たとえば、
こうした差が生まれると、「自分は損をしているのでは?」と感じる社員が出てきます。
また、時間単位有給を使い切ったあと、半日有給がない会社では急に有給が使いづらくなったと感じるケースもあります。
制度そのものが悪いわけではなく、制度の切り替わり部分で違和感が生まれやすいという点が、実務では悩ましいところです。
総務・会社側から見た「時間単位有給」の現実
時間単位の有給というと、総務や人事の現場では、「管理が大変そう」「手間が増えるのでは?」といった不安の声が出やすいのが正直なところです。
実際、1日単位の有給に比べれば、
といった負担は確かに発生します。
「使いやすさ」を重視しすぎると、今度は「管理しづらさ」が問題になる、という懸念が出てくるのも無理はありません。
ただし、実務の現場を見てみると、時間単位有給が想像していたほど大きな負担にならないケースも少なくありません。
たとえば、
といったケースも多く、会社の規模や体制次第では、十分に現実的な制度として運用できます。
ここで押さえておきたいのが、時間単位で取得できる有給は、あくまで「年間5日分まで」という点です。
それを超える部分については、これまで通り、半日単位や1日単位の有給として管理することになります。
つまり、実務上は、
という「併用」が前提になります。
この形であれば、年間5日間の有給取得義務については1日単位で対応しつつ、それ以外の場面では、時間単位有給を柔軟に使うことができます。
たとえば、お昼過ぎから体調が悪くなったときに、15時から18時までの3時間を時間単位有給として使い、残りの有給日数は、これまで通り1日単位で管理する。
こうした運用であれば、制度を無理に複雑化させることなく、社員の「使いづらさ」だけを軽減することができます。
総務として大切なのは、すべてを時間管理にするか、1日管理にするか、という二択ではありません。
時間単位(5日分)と1日単位の有給をどう組み合わせるかという視点で考えることで、
現実的で、かつ納得感のある制度設計がしやすくなります。
時間単位有給は「導入するか」より「どう使われているか」
時間単位有給は、確かに便利な制度です。
ただし、「年間5日分まで」という上限がある以上、それだけで有給休暇に関する不満がすべて解消されるわけではありません。
大切なのは、制度を導入しているかどうかではなく、その制度が、自社の働き方に合った形で使われているかという点です。
有給休暇は、使いやすさと、休みやすさのバランスが取れてこそ、本来の役割を果たす制度なのかもしれません。
総務や会社が考えるべき有給休暇の柔軟性
有給休暇の制度を見直すとき、大切なのは「どの制度が正解か」を決めることではありません。
「社員が納得して使えるかどうか」この視点を持てているかどうかです。
大事なのは「不公平感」を指摘されたときの説明力
制度は、どれだけ整っていても、不公平だと感じられた瞬間に不満が生まれます。
そのとき、総務や会社ができることは、
ことです。
「ルールだから仕方ない」で終わらせてしまうと、不満は溜まる一方です。
一方で、
を説明できれば、納得感は大きく変わります。
有給を使う目的は社員によってまったく違う
有給休暇を使う理由は、社員一人ひとりでまったく違います。
どれも、正解・不正解はありません。
だからこそ、「こう使うべき」という前提ではなく、柔軟に選べる仕組みが重要になります。
有給は、会社が与えている“ご褒美”ではなく、社員が安心して働くための制度です。
有給一つとっても社員のための制度かどうか
有給休暇の使い方を見れば、その会社がどれだけ社員の立場で制度を考えているかが見えてきます。
時間単位の導入そのものよりも、大事なのは姿勢です。
こうした視点を、会社や総務の側から示すことができれば、福利厚生としての印象も大きく変わります。
有給休暇は、「休むための制度」であると同時に、安心して働ける職場かどうかを映す鏡でもあります。
まとめ:有給休暇の使いやすさは制度の柔軟性で変えられる
有給休暇が「使いづらい」と感じられてしまう背景には、制度そのものではなく、取得単位や運用方法が実態に合っていないという問題があります。
1日単位や半日単位の有給は、会社として管理しやすい一方で、使う側にとっては無駄に消費している感覚や、不公平感を生みやすい側面があります。
特に、勤続年数が浅く有給日数が少ない社員ほど、その影響は大きくなります。
こうした不満は、従業員がわがままだから生まれるのではありません。
制度が生活や働き方に追いついていないだけです。
時間単位での有給取得は、その不公平感を和らげ、必要な時間だけ休める柔軟性を持たせる選択肢のひとつです。
会社の体制や規模によって向き不向きはありますが、運用次第では、労務管理の大きな負担にならないケースも少なくありません。
大切なのは、どの制度を選ぶかではなく、社員が納得して使える仕組みになっているかという視点です。
有給休暇の使い方を見直すことは、社員の安心感や、「この会社は自分たちのことを考えてくれている」という信頼にもつながります。
有給休暇ひとつを取っても、時代に合わせて柔軟に考えていくこと。その姿勢こそが、
これからの会社や総務に求められている役割なのかもしれません。
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