
ネットで「総務はやめとけ」という言葉、よく見かけます。たしかに、業務の範囲が広くて責任も重い仕事です。
私も現役のころは、仕事の幅が広すぎてしんどい…と思ったことが何度もありました。
しかし、総務のネガティブな評判の裏には、「誤解」もたくさんあります。
「総務は無能の集まり」といった心ない言葉に惑わされる必要はありません。
総務は地味に見えて、実は会社の中心を支えるポジション。トラブルを未然に防ぎ、社内を整える役割を担っています。
つまり「会社が回るかどうか」は総務の手にかかっていると言っても過言ではありません。
華やかさはなくても、誰かの役に立っている実感がある。私はそれが、この仕事のいちばんの魅力だと思っています。
本記事では「総務はやめとけ」と言われる理由と、その裏にある本当の価値を元総務部長の立場から解説します。
総務はやめとけと言われる4つの誤解
まず、多くの人が「総務はきつい」「報われない」と感じる理由を整理してみましょう。
ネガティブなキーワードとして検索される、以下の4つの主な誤解を一つずつ解消していきます。
「総務は仕事が多すぎ」「人事や総務はきつい」は本当か?
よくあるのが、「仕事が多すぎる」「人事や総務はきつい」といった声です。
総務は会社全体を支える仕事なので業務は確かに幅広いです。
備品発注から福利厚生、中には人事・労務管理まで兼任するため、業務量が膨大になるのも事実。
しかしそのぶん、入社から退職までの全プロセス、経費から法務まで、会社の全体像と仕組みを網羅的につかめるという、他の部署にはないメリットがあります。
「総務はつぶしがきかない」はキャリアの不安か?
「総務 つぶしがきかない」という声は、総務の専門性が「広すぎる」ために起こります。
営業やエンジニアのように一つの技術を深掘りするキャリアとは対照的です。
これは専門性がないのではなく、法務・労務・設備・経理など多方面に広がる、
「総合管理能力」という独自の専門性を築いている証拠です。
この総合力は、後のキャリアで経営企画や管理部門のトップを目指す上で、最大の武器となります。
「総務は落ちこぼれ、無能の集まり」という偏見の裏側
「総務は誰でも出来る仕事ですか?」という質問から派生する「総務は無能の集まり」という偏見も存在します。
これは、総務の仕事の多くがルーティンや雑務に見えるためです。しかし、
など、ミスが許されない重要な業務を担っており、注意力と責任感の高さが求められるポジションです。
見えない部分で会社のリスクを背負っているのが総務のリアルです。
問題なく会社が動いていることが総務の功績
仕事の成果は、「営業成績が良い」「商品開発に貢献した」などわかりやすいものに目がいきがちです。
裏方業務が多い総務は「できて当たり前」と思われる一方で、「問題なく会社が動いている」ことが最大の功績。
こうした裏方の評価は、問題がない日常では目に入りにくくなります。
そうした視点を持たない人にとっては「何もしていない」と誤解されやすくなりますね。
この点は、総務を経験した人でないとなかなかわからないため、見落とされがちになります。
「総務は病む」と言われる板挟みと報われない感覚
総務は、社員と経営層、部署と部署の間に立ち、常に板挟みになるため「総務は病む」という言葉も生まれます。
これは、総務に限らず社会人ならば少なからず誰かと誰かの板挟みになることはあります。
総務に関しては、評価されにくい点もストレスになりますが、これは見え方の問題なんです。
板挟みと言っても、言い換えれば信頼されているからこそ頼られる立場。
関連記事:【もぅうんざり】職場で板挟みばっかりでうんざりな総務社員へ|考え方ひとつでスッキリする解消法あとで読む評価はすぐに数字に出ませんが、いざトラブルが起きたとき「助かった」と言われる感謝の瞬間が必ずあります。
そこに総務の本当の価値があります。
中小企業の総務はただの「何でも屋」じゃない
中小企業の総務はしんどい、という声は、元総務部長として最も共感できる部分です。
中小企業の総務は、まさに「会社の何でも屋」的にさまざまな業務を担います。
人事・労務・経理・庶務・法務…すべてが自分の担当になることも珍しくありません。
朝一番で役所へ、昼は社員トラブル、夕方には社長の突発依頼…
気づけば自分の仕事は夜に回る、なんてことも実際にあります。
しかし、この「しんどさ」こそが、後のキャリアで大きな財産になるのです。
この環境は裏を返せば「会社のすべてを知っている存在」なのです。
どんな部署でも相談できる相手であり、トラブルの火消し役でもある。
正直しんどい日も多いですが、そのぶん経験値はどんどん積み上がり経営全体を把握する力が自然と身につきます。
私はこの経験が、のちに社長の隣で経営判断をサポートする立場になったときに、本当に役立ちました。
表向きは「何でも屋」でも、実際は会社の仕組みを一番理解しているプロ。それが中小企業の総務なんです。
関連記事:【区分明瞭】総務が何でも屋にならないために!元総務部長が実践した雑務を押し付けられない工夫と実践術あとで読む総務で磨かれる「生きたスキル」こそ最大の武器
総務の仕事は、雑務を担うことも多く、専門知識が必要ないと思われがち。
そのため、資格を取得する機会もあまりなく「つぶしがきかない」職種と思われています。
しかし、総務の仕事の本質は、資格よりも「現場で鍛えられる力」です。
単に頭に詰め込んだ知識ではなく、自ら手を動かし現場で身に付けたスキルは、環境が変わっても役立つものばかりです。
究極のマルチタスク能力と優先順位付け
いくつもの仕事を同時に進めるマルチタスク能力。
突発的なトラブルや社員からの要望に対し、優先順位を見極め、冷静に対応する判断力が鍛えられます。
この能力は、管理部門だけでなく、プロジェクトを推進するあらゆる職種で即戦力になります。
経営層直結の「コンプライアンス感覚」
契約書、株主総会、法改正への対応など、総務は会社のリスク管理の最前線にいます。
ここで培われる法令遵守の意識と、それを社内に浸透させるガバナンスの感覚は、全社的な視点を持つ人材として極めて高い市場価値を持ちます。
全員を納得させる「コミュニケーションと調整力」
社内の人たちと良い関係を築き、部署間の利害を調整する力は、総務ならではのスキルです。
ときには社員間のトラブルの板挟みを経験することで、納得させる高度な交渉力や事態を収める力が養われます。
事務職という枠を超えて、経営を支えるスキルを育てられる、これが、総務の「生きた武器」といえます。
実は「勝ち組」キャリアに近い総務
少し意外に思うかもしれませんが、長い目で見ると総務職は勝ち組キャリアに近いです。
その理由は、総務が持つ「経営への近さ」にあります。会社として、重要なポストに就かせたい人材とは、
社員でありこれらは、総務が担う業務で自然と習得できる経験です。
実は総務という立場は、会社として重要な人材になる近道でもあるのです。
経営視点を習得できる最高の環境
総務は経営層と接する機会が多く、資料の作成や契約関係の確認を通じて、自然と「経営の考え方」が身についていきます。
会社の数字の感覚やリスク管理にも自然と強くなります。
私自身、総務を経験したことで「会社を俯瞰して見る力」が身につきました。
管理部門トップへの最短ルート
総務を経験した社員は、その幅広い知識を活かして人事、経営企画、管理部長とキャリアアップすることも珍しくありません。
特に管理部門の統括者(ジェネラリスト)を目指す上で、総務で培った全社的な視野と調整力は必須です。
目立たないようで、実は将来の選択肢が広いポジションなんです。
総務の仕事はAIに奪われる?AI時代に総務が生き残る道
AIが発達しても、総務の仕事はなくならないでしょう。
むしろ「人だからこそできる仕事」がまだまだ多いのが総務の現場。
特に中小企業では人に依存する業務は多くあります。
AIやRPAが導入されるのは、備品発注や定型的なデータ入力といった、マニュアル化されたルーティン業務が中心。
しかし、社員の悩み相談や社内の空気づくり、部署間の調整など、相手の感情をくみ取って調整する力はAIにはまだありません。
社内の温度を感じ取り、タイミングよく動くのは人間の感覚が必要です。
これからの総務は、AIをうまく使いこなせる「戦略総務」へと進化することが求められます。
私もAI導入を経験しましたが、結局「人を動かす力」が一番の武器でした。
総務のキャリアを伸ばす資格とスキル
資格がすべてではありませんが、「知識を証明する」手段として役立ちます。
総務職としてステップアップし、転職市場で「勝ち組」になるために、具体的に何をすべきかお話していきます。
専門性を高めるコア資格
・日商簿記:経理や会計の流れを理解できると、経費の流れを説明できるようになり、経営層との会話がスムーズになります。
・社会保険労務士(社労士): 人事労務を兼任する総務にとって最強の武器です。法律に基づいた制度設計能力は、経営層への提言力を飛躍的に高めます。
・ビジネス実務法務検定:契約書管理やコンプライアンス体制構築に役立ち、法務部門やコンプライアンス部門へのキャリアチェンジに有利です。
キャリアを加速させる実務スキル
ルーティンワークを効率化し、「戦略総務」へ進化するためには、ITリテラシーが不可欠です。
・ITツール導入経験:勤怠管理システム(SaaS)、ワークフロー、RPAツールなどの選定・導入・運用経験は、転職市場で非常に高く評価されます。
・高度なExcelスキル:備品管理や予算集計など、総務の効率化に直結します。マクロやVBAまで使えるようになれば、業務改善の主導権を握ることができます。
総務を辞めたいと思ったときに知っておいてほしいこと
誰でも一度は「もう辞めたい」と思う瞬間があると思います。
私も現役時代に、理不尽なことを言われたり、頑張っても気づかれなかったりして、何度も壁にぶつかりました。
でも、少しだけ立ち止まって考えてほしいのは、「なぜ辞めたいのか」という部分。
環境の問題なのか、仕事内容が合わないのか。
そこを整理すると、意外と「やり方を変えるだけで楽になる」こともあります。
もし本当に限界なら、転職も悪くありません。
総務で培った汎用性の高い経験は必ず活かせます。
辞めるか続けるかの判断は、自分の成長につながる選択であればどちらでも正解です。
大事なのは、「自分の価値を自分で下げない」ことです。
関連記事:【もう限界…】総務の仕事がつらくてもう辞めたい…つらい原因と“辞める前に整理したいこと”あとで読むまとめ:「やめとけ」ではなく「やってみる価値がある」仕事
総務の仕事は、確かに楽ではありません。
しかしそのぶん、得られる経験と学びは、他の職種ではなかなか得られないほど大きいものです。
人間関係の調整、会社の仕組みづくり、経営の裏側まで知ることができる。これが総務の特権です。
私が長年総務を続けてこられたのは、「人の役に立っている」と実感できたからです。
社長から「助かった」の一言をもらった瞬間に苦労が報われることも何度もありました。
たとえ目立たなくても、誰かの仕事を支えることで会社が動く。
その裏方の誇りこそが、総務の本当の価値だと思います。
だからこそ、「やめとけ」という言葉に振り回されず、自分の目で「やってみる価値」を確かめてほしい。
総務は、静かに、でも確実に会社を動かす力を持っている仕事です。
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