
社内ルールや業務依頼に対し、何かと細かい指摘や不満をぶつけてくる「社内クレーマー」。
対応に時間を取られるだけでなく精神的な負担も大きく、総務として悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
ときには理不尽な言いがかりに聞こえるクレームも、総務にぶつけられることもあります。
本記事では、総務の現場で見てきた社内クレーマーの特徴を整理しつつ、総務が時間を取られないための実践しやすい具体的な対応策と、トラブルを長期化させないための社内体制づくりを解説します。
感情論ではなく「冷静に、組織として対応する」ための考え方を身につけ、無駄な消耗を減らしていきましょう。
社内クレーマーとはどんな社員?
迷惑になりやすい社内クレーマーの特徴
社内クレーマーとは、業務内容や社内ルール、人間関係など、あらゆる場面で執拗にクレームや指摘を繰り返す社員を指します。
本来、社内の意見や改善提案は健全なものですが、社内クレーマーの場合は「改善」ではなく「攻撃」になっている点が問題です。
20年近く総務業務に携わる中で感じるのは、社内クレーマーには共通した傾向があるという点です。
主観が強く自分の価値観を絶対視する一方で、全体最適や他者の事情を考慮しないケースが多く見られます。
また、指摘が細かすぎて業務の本質から外れる、後出しでクレームを出すことで調整を混乱させることも。
以下では、総務が特に対応に苦慮しやすい代表的な特徴を一つずつ解説します。
主観が強く客観視できない
社内クレーマーは、事実や全体状況よりも「自分がどう感じたか」を基準に物事を判断しがちです。
という前提で話を進めるため、冷静な議論が成立しにくくなります。
その背景には「こうあるべきだ」という強い固定観念があり、会社全体の事情や他部署の状況を考慮できないケースも少なくありません。
総務としては、相手の感情に引きずられず、事実と意見を切り分けて整理する姿勢が求められます。
自己中心的な考え方をする社内クレーマーには、無理に同調せず一定の距離を保つことが、結果的に自分の負担を減らす第一歩になります。
自分が一番正しいと思い込んでいる
社内クレーマーは、自分の意見や価値観を過度に正当化し、他人の意見を受け入れない傾向があります。
会議や打ち合わせでも一方的な主張になりやすく、議論ではなく「相手を言い負かすこと」が目的になっている場合もあります。
さらに、
といった、過剰な自己評価をしている点も特徴です。
自分の意見が常に正しいと思い込み、無意識にマウントを取る姿勢が見られるため、対応する側はやり取りだけで疲れてしまうこともあります。
こうした思い込みが強いほど指摘は攻撃的になりやすく、結果として周囲との摩擦を生みやすくなります。
柔軟性がなく融通が利かない
新しいルールや業務改善に対して、「昔からこうしている」「それは無理だ」と否定から入るのも社内クレーマーに多い特徴です。
会社の状況や時代の変化に適応できず、結果として周囲とのズレが広がっていきます。
特にデジタル化や新システム導入では、旧来のやり方に固執し、総務の負担を増やす原因にもなります。
やってみることより、自分の気分や考え方を優先して判断するため、会社の決まりごとを軽く見ていることもあります。
変化を前向きに捉えられない姿勢が、クレーム体質を強めているケースも少なくありません。
指摘が細かすぎて本質から外れる
書類のフォントや言葉遣いなど、業務の本質に影響しない部分への過剰な指摘も代表的な特徴です。
総務としては「実務上問題なく、ミスを防げる」レベルで十分でも、社内クレーマーは完璧以上を求めてきます。
こうした指摘は積み重なるほど対応者のストレスとなり、業務効率も下がります。
全てを受け止めるのではなく、「重要度」で線引きする視点が欠かせません。
また、「叩き台」の段階でも細かい指摘が多く、「まだ叩き台なのに、そこまで指摘しなくても…」と内心イラっとした経験がある人も多いのではないでしょうか。
孤立しやすく社内で浮いている
クレームや否定的な発言が続くことで、周囲から距離を置かれ、結果的に孤立していくケースも多く見られます。
問題は指摘そのものではなく、その内容や伝え方がズレている点です。
周囲が違和感を覚える指摘が続くと、次第に相手にされなくなり、本人は「周りがおかしい」と感じて態度を硬化させます。
また、距離を置かれていると、逆に総務や管理部門に対して執拗にクレームを入れ、近づいてくる社内クレーマーもいます。
この悪循環が続くことで、クレームはさらにエスカレートし、対応する時間だけが無駄に増えていきます。
社交性が低く他人の意見を理解しない
人の話を最後まで聞かず、途中で遮って反論するのも、社内クレーマーにありがちな行動です。
相手の意図や背景を理解しようとせず、自分の主張だけを押し通そうとするため、会話が成立しにくくなります。
その結果、話が噛み合わず、周囲は「話しても無駄だ」と感じ、対応そのものを避けるようになります。
また、聞く姿勢が低く一方的に話し続ける傾向があるため、議論や調整が前に進まないケースも少なくありません。
本人は「正しいことを言っているだけ」という認識でも、周囲からは協調性に欠ける態度として受け取られやすく、徐々に信頼関係が損なわれていきます。
こうした態度が続けば、信頼関係は築けず、チームワークにも悪影響を及ぼします。
後出しクレームを繰り返す
会議中や打ち合わせでは特に異議を唱えず、終了後になってから不満や指摘を持ち出す「後出しクレーム」も、社内クレーマーに多く見られる行動です。
その場では問題がなかった前提で進めた内容に対し、後から異論を出されるため、調整のやり直しが発生しやすく、総務にとっては非常に厄介な対応となります。
といった形で後出しされると、内心では「その場で言ってほしかった」「今さら言われても…」と感じながらも、無視するわけにはいきません。
結果として、関係者への再説明や修正対応が必要となり、担当者の時間と労力が奪われていきます。
社内クレーマーへの賢い対応法:総務が消耗しないために
社内クレーマーの対応を真正面から受け止めてしまうと、時間も気力も奪われ、精神的な負担が増える一方です。
総務として重要なのは、相手を変えようとするのではなく、自分たちの「対応の仕方」や距離感を見直すことです。
感情的に応じたり、その場しのぎで対応を続けてしまうと、クレームはむしろ長期化しやすくなります。
ここでは、総務の現場で実践しやすく、無駄な消耗を減らしながらトラブルを長引かせないための基本的な対応法を紹介します。
感情で反応しないことが大前提
クレーム対応で最も避けたいのが、こちらが感情的に反応してしまうことです。
相手が感情的になっているほど、総務側は事実ベースで淡々と対応する姿勢が求められます。
こちらも感情的になると、社内クレーマーは「攻撃された」と受け取り、さらに口調がきつくなることがあります。
また、焦った様子や困っている姿勢を見せてしまうと、その反応を楽しむようにクレームがエスカレートするケースも少なくありません。
一度深呼吸してワンテンポ置き、「事務的に返す」「感情を乗せない」という距離感を意識しましょう。
感情に巻き込まれず冷静さを保つことが、結果的に自分自身を守り、対応を長引かせないための基本になります。
クレームには「確認」を前提に対応
社内クレーマーからのクレームに対しては、すぐに結論を出して返答することは控えた方が無難です。
その場の判断で対応してしまうと、「あなた個人の判断」と受け取られやすく、結果として個人攻撃に発展するリスクがあります。
また、クレーム内容に対して「それは勘違いです」「その認識は違います」といった表現は、相手を刺激しやすく、感情的な反発を招きがちです。
正しさを伝えようとしても、対立構造を作ってしまうと話はこじれてしまいます。
そのため、すぐに是非を判断せず、
といった形で、いったん保留にする対応が有効です。
この「確認する」というクッションを挟むことで、発信を個人ではなく組織に寄せることができ、不要な攻撃を受けるリスクを下げられます。
ただし、この対応は受け手自身が感情的になっていると取りにくいため、前提として冷静さを保っておくことも重要になります。
相手の名前を出して良いか聞いてみる
社内クレーマーのクレームでは、特定の個人名が挙がるケースも少なくありません。
といったように、矛先が特定の社員に向けられることがあります。
このような場合、「確認しますが、その際にあなたの名前を出しても良いですか?」と一度聞いてみるのも、相手を冷静にさせる有効な手段です。
名前を出すことを確認されると、「自分がクレームを言っている立場」であることを意識せざるを得なくなり、発言の重さを考えるきっかけになります。
など、保身の意識が働くことで、クレームのトーンが弱まるケースも多いです。
そこで「名前は出さないでほしい」と言われた場合は、念のため「相談先から誰の意見か聞かれた場合、どうお伝えすればよいですか?」と確認してみましょう。
すると、
と引き下がるケースがほとんどです。
この反応から分かるように、すべてのクレームが深刻な問題提起とは限らず、不満を吐き出したいだけのケースも少なくありません。
クレームであっても相談されたら回答はする
社内クレーマーからの相談が、たとえクレームのように感じられる内容であっても、回答自体はきちんと行いましょう。
対応を後回しにしたり、返答しないままにすると、
と受け取られ、かえって不満を増幅させてしまうことがあります。
結果として、その後のクレームが増えたり、内容が過激になるリスクも高まります。
社内クレーマーとのやり取りを長引かせないためには、「対応の区切り」を明確につけることが重要です。
必ずしも対面や口頭である必要はなく、社内メールや簡単な伝言でも構いません。
「確認した結果、現時点ではこの対応になります」といった形で、事実と結論を簡潔に伝えるだけでも十分です。
また、回答を形に残すことは、「きちんと対応した」という証拠にもなります。
感情的なやり取りを避け、淡々と対応を完結させることで、不要な蒸し返しや追加クレームを防ぐことにつながります。
前向きな発想や会話に意図的に変える
社内クレーマーからのクレームは、「〇〇はできない」「△△には不満がある」など、否定や不満を前提とした内容がほとんどです。
このマイナス思考の流れのまま会話を続けてしまうと、聞き手は受け身になり、精神的に消耗しやすくなります。
そこで意識したいのが、会話の方向性を意図的に前向きなものへ切り替えることです。
たとえば、「〇〇はできない」というクレームに対しては、
「では、できるようにするには、どんな方法が考えられそうですか?」
と、提案型の問いかけに変えてみましょう。
不満を受け止めつつも、話の主導権をこちらに戻す効果があります。
この問いかけをすると、相手の反応は大きく二つに分かれます。
一つは、本当に改善したいと考えており、具体的な提案が出てくるケースです。
この場合は、
と前向きに受け止めることで、クレームはその場で収まりやすくなります。
「話を聞いてもらえた」「理解してもらえた」という印象を与えられる点でも、賛同や共感の姿勢は有効です。
もう一つは、具体的な案はなく、単に不満を言いたかっただけのケースです。
この場合でも、一度言葉にして吐き出せたことで気が済み、そこでクレームが終わることも少なくありません。
無理に結論を出そうとせず、「意見として聞く」スタンスを取ることが、結果的に建設的で相手の機嫌を損ねにくい対応につながります。
後出しクレーマーを生まないための仕組みづくり
後出しクレームは、決定後になってから不満が噴き出すため、総務の負担が大きくなりがちです。
このタイプのクレーマーを増やさないためには、個別対応よりも「事前の仕組みづくり」が重要になります。
まず、会議や制度変更の際には
を全社員に明確に周知しましょう。
試用期間がある場合は、単なる批判ではなく「改善案や提案として意見を出してほしい」と伝えることで、後出しの不満を減らしやすくなります。
また、議事録や決定事項は、総務だけが管理するのではなく、全社員がいつでも確認できる場所に保管することも有効です。
「聞いていない」「知らなかった」という言い分を防ぐことで、後出しクレームそのものを起こりにくくできます。
記録と線引きで総務が「振り回されない」状態をつくる
ここまで紹介してきた対応を続けるうえで、総務が消耗しないために欠かせないのが「記録」と「線引き」です。
社内クレーマーとのやり取りは、口頭だけで終わらせず、必要に応じてメールやメモ、議事録など形に残しておくことが重要です。
記録を残す目的は相手を責めることではなく、事実関係を整理し話がねじれたり蒸し返されたりするのを防ぐためです。
また、寄せられるクレームのすべてに対応する必要はありません。
会社として対応すべき内容なのか、個人の不満や主観にとどまるものなのかを見極め、「対応する・しない」を意識的に区別することが大切です。
この線引きが曖昧なままだと、総務が何でも引き受ける窓口になり、負担だけが増えてしまいます。
感情に巻き込まれず、確認を前提に距離を取り、必要なものだけを組織として扱う。
記録と線引きをセットで考えることで、社内クレーマーに振り回されない対応がしやすくなります。
社内クレーマーの対応でやってはいけないこと
ここまで、社内クレーマーの特徴や「総務が消耗しないための対応」を見てきました。
しかし実際の現場では、悪気なく取った行動が逆効果となり、クレームを悪化させてしまうことも少なくありません。
ここでは、状況をこじらせやすいNG対応を整理しておきます。
真っ向から否定するのはNG
社内クレーマーは、感情が先行しているケースが多く、「自分は正しい」という前提で話しています。
そのため、いきなり「それは違います」「おかしいです」と正面から否定すると、話の中身よりも対立構造が強調されてしまいます。
まずは事実確認を優先し、「そう感じているのですね」と一度受け止めたうえで、必要な部分だけを冷静に整理する方が、結果的に早く収束しやすくなります。
熱くなり感情的に言い返す
強い言葉で返したくなる場面でも、感情で応戦するのは得策ではありません。
その場はスッとしたとしても、相手からは「感情的に攻撃された」と受け取られ、新たなクレームの火種になる可能性があります。
根に持つタイプも少なくない
社内クレーマーの中には、攻撃された記憶を長く引きずるタイプもいます。
一度こじれると、次のクレームがより攻撃的になり、最終的にはハラスメント問題に発展することも。
総務としては、相手の感情に巻き込まれない冷静さが、最大の防御策になります。
その場しのぎで安請け合いする
「とりあえず対応します」と曖昧な約束をすると、後から自分の首を絞めることになります。
クレーマーは「言えばやってくれる人」と認識すると、要求のハードルを徐々に上げてきます。
対応を約束する前に、できること・できないことを見極めることが重要です。
判断が難しい場合は、「検討してからご返答します」と一旦持ち帰る姿勢を徹底しましょう。
放置してエスカレートさせる
「そのうち収まるだろう」と対応を後回しにすると、クレームが膨らみ、周囲を巻き込むリスクが高まります。
また、記録や対応履歴が残っていないと、後になって「なぜ何も対応しなかったのか」と、総務側が責任を問われる可能性もあります。
裏で不満が広がるリスク
放置された社内クレーマーは、「総務は何もしてくれない」
と周囲に不満を漏らすことがあります。
しかも話は誇張されやすく、知らないうちに「総務は頼れない」という印象が広がってしまうことも。
小さな段階で事実を整理し、対応を始めることが、結果的に信頼低下を防ぐ近道です。
まとめ:社内クレーマー対応で総務が消耗しないために意識したいこと
一人で抱え込まず、総務自身を守る対応を選ぶ
社内クレーマーへの対応で最も大切なのは、相手を変えようとせず、総務自身が消耗しない関わり方を選ぶことです。
感情に巻き込まれず事実ベースで対応し、即答せず「確認」を前提にすることで、無用な衝突や個人攻撃を避けやすくなります。
また、会話を前向きな方向へ切り替える工夫は、クレームを長引かせないための有効な手段です。
判断に迷う内容や負担の大きい対応は、一人で抱え込まず上司や先輩と共有しましょう。
総務がすべてを背負う必要はありません。
線引きを意識し、相談できる体制を前提に行動することが、結果的に自分を守り、職場全体の安定につながります。
社内クレーマーの意見を「使える部分だけ拾う」という視点
社内クレーマーを無理に味方にする必要はありませんが、見方を変えればヒントをくれる存在になることもあります。
不平や不満が多く厄介に感じやすい一方で、良くも悪くも「発信力」が強いのが社内クレーマーの特徴です。
この発信力の中には、現場の不満や改善点といった、会社にとって参考になる意見が含まれている場合もあります。
ただし前提は、会社や組織にとってプラスになる内容であること。
すべてを受け止める必要はなく、「使える意見だけ拾う」くらいの距離感を保つことが、総務が消耗しないための現実的な関わり方と言えるでしょう。
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